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オリバ通信

2022年12月17日 / 病気のあれこれ / 犬のよくある病気・疾患 / 猫のよくある病気・疾患 / 消化器科

犬猫の下痢の症状と原因、治療について|獣医師が解説


豊橋市、豊川市、新城市、田原市、浜松市、湖西市のみなさんこんにちは。
愛知県豊橋市のオリバ犬猫病院の獣医師の辻元です。
今回は、犬猫の下痢の症状と原因、当院での治療について説明をさせていただきます。


〈下痢〉

当院の受診の症状として最も多い下痢には消化器だけでなく、消化器以外の内臓機能の異常、環境の変化によるストレス、偏った食事、細菌性、寄生虫性、ウイルス性等の感染症など、様々な理由で下痢になる可能性があります。

老犬や子犬に急性の下痢がある場合命に関わることがあります。その為下痢、もしくは軟便に気づいたら様子を見ずに病院へ受診してください。

 

〈症状〉

・便が緩い(軟便、下痢)

・血便

・便を何回もする

・口をくちゃくちゃ、ペロペロする(吐き気)

・脱水

・便がいつもよりクサイ

・クサいおならが多い

・お腹がよく鳴る

・食べない日が続く

・痩せてきた

・元気がない

・口が臭い


〈原因〉

 

①細菌感染によって起こる腸炎

原因として、芽胞菌や、らせん菌(カンピロバクター)、酵母様真菌などが腸内で感染、もしくは大量に発生する事で腸炎が起こります。

らせん菌は健康な犬や猫の腸内でも検出する事ができ、ストレスや身体の免疫が低下した時に症状が起こります。

細菌の起こす毒素(ガス)によって、腸粘膜が刺激されてめくれてゼリー状の便や血便、下痢が起こります。ガスが発生するのでお腹もよく鳴ります。

感染源として、散歩中の土や水たまり、一緒に住んでる犬猫の糞便、犬猫が使用した食器を洗わないなどか挙げられます。

↑画像は当院で細菌感染による下痢で受診した子の便の顕微鏡(矢印の先に芽胞菌)

②ウイルス性による下痢

パルボウイルス感染症、犬(猫)コロナウイルス感染症などのウイルス感染が原因による下痢※新型コロナウイルスとは違うウイルス種類です。

どちらも下痢や嘔吐と消化器症状を起こします。

感染源として、感染動物の糞便、嘔吐物の接触により感染します。特にパルボウイルスは感染力も強く、環境の耐性も強いウイルスです。感染すると仔犬・仔猫共に致死率が高く、妊娠した犬猫だと流産、死産の原因にもなります。

<犬のパルボウイルス感染症について獣医師が解説>も合わせて読んでください
https://oliba-dog-and-cat-clinic.jp/2024/07/2545/

 

③寄生虫感染による下痢

内部寄生虫といわれる回虫、鉤虫、瓜実条虫やコクシジウム、腸トリコモナス、ジアルジアなどの経口摂取によって感染し、下痢などの消化器症状を起こします。

↑画像は当院で寄生虫感染による下痢で受診した子の便の顕微鏡(魚のような形をした寄生虫ジアルジア)


↑画像は当院で寄生虫感染による下痢で受診した子の便の顕微鏡(虫卵)


④食事による下痢

脂肪分の高い食べ物、いつもと違うおやつ、古くなったドライフード、異物、食物アレルギーなど与える物によって下痢の原因になります。



⑤内臓の異常による下痢

心臓、膵臓など内臓の炎症や異常、子宮蓄膿症、消化器内の腫瘍がある場合下痢や嘔吐を起こす原因になります。

代表例として
子宮蓄膿症は細菌が子宮内に感染して、子宮内膜が腫れて炎症を起こし、膿が溜まることで発症します。
膿が溜まるにつれて、腹痛、元気食欲の低下、嘔吐、下痢、陰部からの膿が見られます。
子宮蓄膿症は発症したら体への負担がどんどん悪化していくため、出来るだけ早いうちに子宮の摘出をしてあげる必要があります。

↑画像は当院で手術を受けた子宮蓄膿症の患者の子宮(左が正常、右が膿が溜まった子宮)
犬の子宮蓄膿症の症状と原因、治療法について|獣医師が解説 | オリバ犬猫病院 (oliba-dog-and-cat-clinic.jp)
(画像かURLをクリックしますと以前ブログにしました子宮蓄膿症の記事に移動します)

代表例として

膵炎は膵臓で作られる膵液と言われる(食べ物などを分解する)消化酵素が何かのきっかけで活発になり、食べ物だけでなく膵臓自身も分解してしまい膵臓に炎症が起こることです。強い腹痛を起こし、症状として下痢、嘔吐、運動の低下がみられます。
膵炎は早期発見、治療で数日の治療で治ることがほとんどですが、気づかないで治療が遅れると命に関わる怖い病気です。
一度発症すると再発の多い病気になるので、治療後は療法食による徹底した食事管理が大切になります。

↑膵炎を発症した患者の下痢(においが強く、ティッシュなどで拭いたときに黄疸のような黄色い液が付着)

↑膵炎だと画像のように強い腹痛で腰だけあげたような(ヨガの祈りのポーズ)体勢をとったりします
恐ろしい犬猫の膵炎の症状と原因、治療法について|獣医師が解説 | オリバ犬猫病院 (oliba-dog-and-cat-clinic.jp)
(画像かURLをクリックしますと以前ブログにしました膵炎の記事に移動します)

代表例として
心臓病は全身に血液を送る(循環の)役割を持っています。その心臓が病気になると上手く血液を送ることができず、血管内で血液の渋滞が起こり、パンパンになった血管から水分が漏れてきて、肺に水が溜まる肺水腫やお腹に水がたまる腹水が起きます。それと併発して胃や腸の循環も悪くなり(浮腫むことで)下痢の症状がでます。

 

〈検査内容〉

顕微鏡による便検査を行い、寄生虫、細菌が腸内に感染していないか確認します。
※受診する前に便を採取出来たら便をご持参ください。

必要に応じて

・血液検査にて内臓機能の問題がないかの検査

・レントゲン検査、超音波検査で消化管に炎症がないか画像検査

・糞便を用いたウイルス検査

・治療してみて改善がない場合はアレルギー検査

 

〈治療法〉

下痢の治療は、原因を見つけ出しそれぞれに合った治療を行います。

 

検査の結果…

ストレス性、食事、細菌性腸炎であれば、抗生剤、整腸剤、吐き気止めなどの薬を処方

寄生虫による感染があれば、その寄生虫に効果のある薬(予防薬)を処方もしくは投与します。

脱水が疑われる場合は追加で皮下点滴を行います。

 

ウイルスによる感染があった場合、食事や水をうまく摂取できなくて脱水や栄養失調が起きてる場合が多く、静脈点滴をしながら入院にて治療を行います。

 

膵炎があった場合、静脈点滴を行い内臓の循環を改善させ、血液検査をこまめに行いながら入院にて治療を行います。退院後、臓器によっては継続治療として薬の処方、食事療法を継続していきます。

子宮蓄膿症の場合、早急に手術にて子宮を摘出し、1週間ほど静脈点滴、抗生剤や炎症を抑える注射を行いながら入院にて治療します。
退院後、術後の傷口に異常がないか経過をみながら抜糸を行います。子宮を摘出した後は子宮蓄膿症になる再発リスクは無くなります。



心臓病の場合、心臓が大きく肥大していないか、弁の動きが悪くなっていないかなど画像検査のレントゲン、エコー検査、血液検査で心不全の重症度を測る検査などをして診断を行います。結果に沿って強心剤、利尿剤、血管拡張薬を処方し、通院にて経過をみながら治療を行います。

〈予防〉

散歩中の地面や食器、お風呂などの水回りから細菌感染が起こります。食器(水、ご飯)はこまめ洗うなど清潔に保ち、あまり水回りの水をなめさせたり、散歩で土や地面を舐めさせない様に心がけましょう

 

ウイルス性の下痢の多くは混合ワクチンの接種で防ぐことができ、寄生虫には駆除薬で予防できますので月に1回の定期的な予防を心がけましょう

 

食事は脂肪分の高いおやつをあげない年齢、体格、体質に合ったフードを与えましょう

フードによっては新しく変えたことによって腸内環境の変化で下痢を起こすことも少なくありません、少しずつ段階を踏んでフードを切り替えるのも下痢の予防になります

 

〈下痢は早期発見、早期治療が大切〉

 

下痢は軽度から重度、もしくは死に至ってしまう、様々な原因が絡んだ症状になります。

重度の場合で膵炎ですと、下痢や過度な嘔吐(3回以上)、食欲不振などだんだん症状が悪化して命に関わってきます。

早期で発見する事で、軽症の状態で治療が行えます。

 

毎日の様子、便の形、色、回数などこまめに観察していて様子がおかしいと思ったら病院へご来院下さい。

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